トップページに戻る

霊の真柱
〜国学的皇国中心の世界観〜

皇紀2665年7月4日更新


 そのナショナリズム的な言説や排外主義、日本中心主義が後に大きな影響を与えた江戸時代後期の国学者・平田篤胤が、自らの国学に基づいた世界論を展開した書物、それがこの『霊の真柱』(たまのみはしら)です。

 古事記や日本書紀に基づいて世界を成り立ちを説明するだけでなく、この神話に基づいて、「日本の神話こそ世界でもっとも正しい神話であり、海外の神話はこれが訛ったものだ」「世界の中心は皇国であり、外国が服属するのは当然」などといった、過激な主張が展開されているのが、この本の面白いところ。

 特に西の果てにある国々で「安太牟(あだむ)」「延波(えば)」とかいわれているのは、伊邪那岐神と伊邪那美神が訛ったものだ、というのは有名な主張です。

-

 この「霊の真柱」では、世界の成り立ちについては殊に図を提示して解説をしています。以下の図は全部で10ある図を総合して、私が作成したものです。

 皇国日本は神々が自ら作った国であり天に近いから「」でもっとも尊い、外国は野蛮なので「」という、なんとも分かりやすい世界観。

 この世界観によりますと世界は本来1つのものでした。そこがのちに天、中国(なかつくに)、黄泉の3つに分化したとされます。その後、天(高天原)の神々が中国に降って直接産み出したのが皇国であり、それ以外の外国は潮を固めてつくったものだと説明され、尊卑の根拠が示されます。

 ここから、他国の服属は当然という結論も導き出されます。ちなみに他国の指導者は「酋長」と表記されてたりします。完全に野蛮人扱いです。

 また日本語は世界で最も美しい、外国の言葉はまるで吃音だ等とも述べてもおり、古代ギリシャ人が、周辺民族を「バルバロイ」と呼んでいた歴史を思い起こさせます。

-

 このように何とも排外的な内容に満ちているわけですが、ただ日本最高を連呼するだけでなく、オランダや支那を通じて海外からもたらされていた知識への対応も見られます。勿論、我田引水な対応なんですが。

 先に紹介した「安太牟(あだむ)」「延波(えば)」がその典型ですが、例えば「日本は最高とかいうけど、海外の方が医療が発展しているのでは?」という疑問には、「外国は野蛮な土地なので、病気も多いのです。だから医療が仕方なく発展しただけです」と返答していたりします。ほとんど冗談みたいな内容ですね。

-

 以上に見てきたように、内容的にはかなり無茶なものの連続です。しかし今日奇書を購読するに当たっては稀有な書籍といえるでしょう。上に紹介した内容は一部であって、他にも盛り沢山な内容になっています。

-

 最後に、比較的手に入り易い『霊の真柱』の紹介をしておきます。

 ・岩波文庫版『霊の真柱』 子安宣邦校注、1998年
こちらは原文を出来るだけ残した形のものです。当然現代からすれば読みにくいのですが、当時の表現がほぼそのままである為、読める方はこちらで読んだほうがいいでしょう。ただし、現在は絶版ですので、古書で探す必要があります。

 ・中央公論社版「霊能真柱」(『日本の名著24 平田篤胤、佐藤信淵、鈴木雅之』収録)、1972年
この中公版は現代語訳。文語が苦手な方はこれを。絶版なのですが、たまに書店で見ますので古書でなくても探せばあります。

-

 その他、平田篤胤関連。

よみがえるカリスマ平田篤胤 荒俣
平田篤胤 知のネットワークの先覚者 荒俣
平田篤胤の神界フィールドワーク 鎌田東二

-

トップページに戻る