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「神聖なるドイツ藝術は不滅なり」
『ニュルンベルクのマイスタージンガー』より
(Die Meistersinger von Nürnberg)
A.U.C.2759年11月24日更新

作詞・作曲:ヴィルヘルム・リヒァルト・ヴァーグナー(Wilhelm Richard Wagner)

 

対訳

 歌合戦でヴァルターが優勝し、月桂冠を受ける。しかしヴァルターはマイスターの称号を拒否する。それを受けて、マイスターのひとりであるザックスが、マイスターの芸術の素晴らしさを訴えてヴァルターを諌める。
Sachs :
Verachtet mir die Meister nicht
und ehrt mir ihre Kunst!
Was ihnen hoch zum Lobe spricht,
fiel reichlich Euch zur Gunst!
ザックス:
マイスターを侮るなかれ、
その藝術を讃えたまえ!
汝に豊けくも恵み垂れしは
マイスターが高き誉れの源なるぞ!
Nicht Euren Ahnen, noch so wert,
nicht Eurem Wappen, Speer noch Schwert,
da
ß Ihr ein Dichter seid,
ein Meister Euch gefreit,
dem dankt Ihr heut' Eu'r h
öchstes Glück.
英邁なる汝の祖先も
その紋章も槍も剣も
汝が詩人となりし原因にあらず。
汝を推したるマイスターこそ、
今日の洪福を謝すべき人なり。
Drum, denkt mit Dank Ihr d'ran zurück,
wie kann die Kunst wohl unwert sein,
die solche Preise schlie
ßet ein?
Da
ß uns're Meister sie gepflegt,
grad' recht nach ihrer Art,
nach ihrem Sinne treu gehegt,
das hat sie echt bewahrt.
されば感謝と共に思うべし。
我らのマイスターはこの藝術を、
おのが作法に違わず育み、
おのが感性に従いて養い、
純粋に護り抜きたるぞ。
かかる栄誉をもてる
マイスターの藝術は価値なきものぞや。
Blieb sie nicht adlig wie zur Zeit,
wo H
öf' und Fürsten sie geweiht,
im Drang der schlimmen Jahr'
blieb sie doch deutsch und wahr;
und w
är' sie anders nicht geglückt,
als wie, wo alles dr
ängt und drückt,
Ihr seht, wie hoch sie blieb in Ehr'!
Was wollt Ihr von den Meistern mehr?
王侯らが愛でし その上の
威勢はもはや留めねど、
艱難せまる この日になお
その藝術は真なるドイツ性を保てるなり。
暗雲立ちこめ、息詰まる時代には
殊更に祝福はされねども、
その藝術は高き光栄にあるを見ゆ!
はた何をかマイスターに求めんや。
Habt acht! Uns dräuen üble Streich'!
Zerf
ällt erst deutsches Volk und Reich,
in falscher welscher Majest
ät
kein F
ürst bald mehr sein Volk versteht;
und welschen Dunst mit welschem Tand
sie pflanzen uns in deutsches Land.
Was deutsch und echt, w
üßt' keiner mehr,
lebt's nicht in deutscher Meister Ehr'.
警戒せよ、我ら脅かす妖雲を!
一朝ドイツの民と国 崩れなば、
外夷が擬勢の下
民と和する諸侯は消尽せん。
されば外夷に誑かされし諸侯らは
妖氛をドイツの土に撒かんとすらん。
純粋なるドイツの性、
ドイツのマイスターが光栄の内になくんば、
誰かよく之を知ることあらんや。
Drum sag' ich Euch:
ehrt Eure deutschen Meister,
dann bannt Ihr gute Geister!
Und gebt Ihr ihrem Wirken Gunst,
zerging' in Dunst
das Heil'ge R
öm'sche Reich,
uns bliebe gleich
die heil'ge deutsche Kunst!
故にぞ我れ、汝に告げん。
ドイツのマイスターを讃えよ。
かくて義しき精神は保たれん!
汝、マイスターの業を称讃しあれば、
神聖ローマ帝国が
霞と潰え去りぬとも
神聖なるドイツの藝術は
永久に我らと共にあらん!
Alle:
Ehrt Eure deutschen Meister,
dann bannt Ihr gute Geister!
Und gebt Ihr ihrem Wirken Gunst,
zerging' in Dunst
das Heil'ge R
öm'sche Reich,
uns bliebe gleich
die heil'ge deutsche Kunst!
全員:
ドイツのマイスターを讃えよ。
かくて義しき精神は保たれん!
汝、マイスターの業を称讃しあれば、
神聖ローマ帝国が
霞と潰え去りぬとも
神聖なるドイツの藝術は
永久に我らと共にあらん!
Volk:
Heil Sachs! N
ürnbergs teurem Sachs!
民衆:
ザックス万歳!
ニュルンベルクの誠実なるザックスよ!

 

<備考>

[1.曲について]
 1868年に初演されたヴァーグナーの楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』終幕部の部分訳です。「神聖ローマ帝国が霞のように消え去ったとしても、神聖なドイツの芸術は変わらず我らに残るでしょう」という箇所は特に有名。

 この箇所の他、「外国に警戒せよ」「純粋なるドイツ性」といった表現などから、後年ナチスによって利用され、『マイスタージンガー』は第三帝国下でたびたび演奏されました。おそらく、『ローエングリン』と並んでナチスに好まれたヴァーグナーの楽劇でしょう。プロパガンダ映画『意志の勝利』でも、この『マイスタージンガー』の曲が流用されています。ただし、この『マイスタージンガー』自体は民族主義高揚の類とは無縁の話です。

 勿論、ヴァーグナー自身が反ユダヤ的だったり、血縁に反ユダヤ主義者が多かったりとややこしい面もあるのですが。そんな事情もあり、イスラエルでは21世紀になるまで、この楽劇が演奏されることはありませんでした。

<関連ページ>
ニーベルンゲン行進曲 ヴァーグナーの作品を編集してつくった行進曲

<参考関連文献>
・『ニュルンベルクのマイスタージンガー
・『ヴァーグナー家の人々 30年代のバイロイトとナチズム

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[2.訳について]
 「Zerfällt erst deutsches Volk und Reich」。この箇所など、ナチ時代の用語との一致があって際どいです。「Volk」も「Reich」もここでは「民」と「国」程度の意味でしょうが、ナチ体制下では、「民族」と「[第三]帝国」の意味で用いられた言葉ですから。

 その他「welsch」という形容詞も、単なる「外国の」というよりも「外夷」のような、否定的な意味合いの強い言葉です。

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[3.音源情報]
 Youtubeに1935年の演奏がありました。ゲッベルスつき。上の歌詞とは微妙にずれていますが、すぐにザックスのセリフが始まるのでわかるはず。

 他にもyoutubeにはナチ時代の演奏が幾つか掲載されています。「Meistersinger」で検索すれば見つかりますので、興味のある方試してみては如何。

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