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海道東征
1940

作詞:北原白秋
作曲:信時潔

[音源情報] [歌詞読解]

 

「海道東征について」

 1940年は「皇紀2600年」という節目である事に加え、折からの支那事変の長期化や国際社会に於ける英米との対立の先鋭化などの環境を踏まえ、国威発揚をも目的としつつ、様々な音楽作品が製作された年でもあります。

 その最も有名なものは「国民奉祝歌 皇紀二千六百(金鵄輝く日本の)でしょう。これは時に煙草の値上げを皮肉った替え歌にもされるほど、人口に膾炙した歌でした。このような歌詞公募の歌謡曲の他、当時一級の詩人・文学者たちによっても様々な奉祝歌が作詞され、東京音楽学校等に属する斯界随一の音楽家たちのよって作曲されました。

 その中でも一際注目されるのが、ここで紹介する「海道東征」です。題の通り、神武東征を主題にしたもので、北原白秋が作詩し、信時潔が作曲した交声曲(カンタータ)です。

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 白秋は『海豹と雲』(1929)より神話を題材とした作品を作り始め、しばしば軍歌や愛国歌の作詩を自発的に行うなどしており、「神話と国威発揚」という題目にはうってつけの詩人でした。この「海道東征」についても、眼病を患いながらも意欲的に取り組んでいたといわれています。

 信時は当時東京音楽学校で教鞭をとる傍ら、すでに「海ゆかば(1937)、「国に誓ふ(1939)など時代に適った音楽を作曲していました。白秋ほど「神話と国威発揚」という題材に積極的だったわけではありませんが、「海道東征」は信時最大の作品であり、白秋没後(1942)も継続作品の構想を練っていた事などから、この作品への力の入れようがわかるかと思います。

 歌詞については、「歌詞読解」の項をご覧ください。

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「海道東征の音源」

 さて、本作品について現在3つの音源が残っています。

(1)1941年録音:木下保指揮、東京音楽学校管弦楽部、東京音楽学校合唱ほか
(2)1969年録音:木下保指揮、北九州混声合唱団
(3)2003年録音:本名徹次指揮、オーケストラ・ニッポニカ

 (1)1941年版は戦前に発売されたSP盤で、今日では昭和館で視聴できる他、以下のCDでも耳にすることができます。

SPレコード復刻CD集 日本SP名盤復刻選集II
SP音源復刻盤 信時潔作品集成

 (2)1969年版は次のサイトで視聴できます:海道東征のページ

 (3)2003年に録音された最新の音源は、次のCDで聴く事ができます:オーケストラ・ニッポニカ 第2集。昔は店舗の通販しかなかったのですが、今ではアマゾン他CDショップでも見かけるようになりました。

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 音源の比較として、私は(1)1941年版を推します。これは私の思い入れもあるのでしょうか、まだCDで聴く事ができなかった時代、『白秋全集』のコピーを持って昭和館に赴き、何時間もこもって聴き続けていた思い出の録音です。

 もちろんSP特有のノイズがありますけれども、普段軍歌のCDで聴き慣れていればそれほど苦にはなりません。白秋も信時も生きていた時の録音というのも、他に比べ優位な点でしょうか。

 戦後の1969年と2003年について。1969年はあらゆる点で2003年のものには及びません。

 2003年の新規録音はたいへんに素晴らしい(音源の質という点でも、この時代に演奏したという点でも)ものなのですが、残念ながら観客の咳が気になります。もうちょっとどうにかならなかったのでしょうか、リハーサルの録音とか。

 とはいえ、他のCDに比べ2500円で買えるのは有難い事です。他の戦時歌謡CDとは違ったスケールの音楽を聴く事ができると思います。

2005424日更新
2009523日改訂

 

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