| 「海行かば」を歌ったことがありますか ―軍歌に込められた近代日本人のこころ 著者:小川 寛大 販売:エイチアンドアイ、2005年 |
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| 総合評価:★★★★ 音源評価:★★ 希少性:★★★★ |
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〈レビュー〉 本書は軍歌について述べた書籍本体と、戦前・戦後録音混声の付属CDからなります。ここでは軍歌CDレビューがメインなので本体と付属の関係がやや逆転してしまいますが、先ずは軽く書籍の方に触れた後で、CDの評価に移りたいと思います。 - ◇書籍編◇ 書籍の方は副題の「軍歌に込められた近代日本人のこころ」の方が本題よりも内容を表していると思います。というのも本書は軍歌をオカズにして政治思想を宣布するものではないですし、また完全に客観的な立場にたって軍歌史を描いてるものでもなく、むしろ「こころ」というものを軸にすえて軍歌を辿っている本だからです。 構成としては、主に軍歌にかかわった人物を中心にして明治から終戦までの軍歌の流れを追っていくといった感じです。政治色の強い主張もないではないですが、おおかた資料に基づいた記述をされてます。こういった本は珍しいですから、日本の軍歌が好きな人は押さえておいて損はないでしょう。 で本書の特徴である「こころ」ですが、要するに本書にはほぼ一貫して情緒的なもの・自然的なもの・民衆的なものなどを称揚して、逆に官製のもの・作為的なもの・知識人的なものなどを批判するという構図があります。例えば、「おおらかな明治」と規制まみれの昭和、情緒的で田舎的な「愛郷心」と理屈的な左右の政治思想、自然にまつられた明治の軍神と政府がつくりあげた昭和の軍神・・・などといった対比。こういった対比のなかで前者を肯定していること、これが「こころ」を軸にしていると私が感じた理由です。 ですから客観的な記述もありますが、あくまで軍歌を「こころ」というある視点からみてまとめあげた本だと思います。例えば「兵隊ソング」の評価は総じて高いですが、戦意高揚を目的とした昭和の戦時歌謡の評価が低い、といった具合。その一貫性は評価できますが、それが軍歌の全体を捉え切れているわけでは当然ありません。その為、読む人によっては違和感を感じる部分は少なからずあるでしょう。 とはいえ、こういった点を留意した上でならば貴重な資料ですので先に述べたように良書だとは思います。 - ◇CD編◇ さてさて本題のCDについて。こちらは戦前録音と戦後録音の混成です。なかに演奏のみのものもあります。 収録曲は本書で著者がとりあつかったものが中心になっています。その為か、明治・大正期の軍歌が多く、昭和期のものはあっても有名曲がほとんど収録されていません。かなり著者の意向が反映しているCDだといえるでしょう。結論からいえば、収集家向けのものだと思います。 - 戦前録音に関してはすでに各社の軍歌CDに収録されているものが多くあります。ただなかには珍しいものもあって、例えば10番の「武窓の歌」や12番の「朝日に匂う桜花〜」などがそうでしょう。 ただし曲目をご覧になってかわるように、メドレーのものが凄く多いです。出来るだけ多くの曲に触れられるようにという配慮なのかもしれませんが、その結果ひとつひとつの曲の演奏がきわめて短くなってしまっています。しかも多くの曲が1番のみしか歌っていないという状態。明治期の旋律が単調な曲は繰り返す中で叙事詩が展開していくものが多いので、この点は大きなマイナスです。 次に戦後録音。こちらはおそらく新録。少なくとも一般のCDでは出回っていない音源ですので、特殊な調達方法をとったことがない人には重複の恐れはないと思います。そういう意味では希少性は高いです。とはいえ内容はほとんどが大人しい演奏に数人の歌唱なので迫力はないですから、あくまで資料といったところでしょうか。一般的な軍歌CDに販売されている音源に慣れている人には物足りないと思います。迫力のある音源を期待してはいけません。 あと著者はともかくとして、一般的な意味では軍歌とは呼べないようなものが収録されています。16番の「蟲のダンス」と17番の「谷間の小川」などがそうです。これらは瀬戸口藤吉のピアノ曲だそうですが、彼が軍艦行進曲の作曲者だからといってこういった曲を入れるのはどうなんでしょうか。 - というわけで当CDは収集家向けのものだというのが結論です。値段は書籍込みで1800円と安いですが、収集家の人にとっては重複の音源もあるので結局のところは適正価格といったところに落ち着くかと思います。とはいえ、書籍の方は先に述べたように特定の立場から軍歌の歴史を追っているという点を留意すれば貴重ですから、それを込みで評価は4といったところでしょう。 皇紀2666年2月11日更新 - |
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